8:衝突
パーツショップに向かう途中で大通りから1本横に入った細い道がある。この道は勝輝がいつもショートカットに使っている脇道だ。
エナジードリンクを飲み終えて茶色い封筒だけを持った勝輝は、いつもと同じようにパーツショップに向かった。細いS字カーブに入った瞬間、前からトラックが飛び出してきた。
「あっ――」
ブレーキを握るよりも早く、視界が真っ白に弾けた。
暴走したトラックは車線を超えて原付に乗った勝輝に真正面からミサイルのように突っ込んできた。勝輝は原付ごと弾き飛ばされて道路脇の壁に激突した。
「やべー、やっちまった」気がつくと勝輝は真っ暗闇の中にいた。そこは壁の内側だった。
壁の中は真っ暗で何も見えていなかったが、不思議と動くことはできた。歩いてみると壁からすり抜けて道路へ出た。するとトラックと壁の間で原付ごと挟まれている自分がいた。
フルフェイスのヘルメットの中の自分の表情は確認できなかったが首筋からおびただしい量の血が溢れていた。「え?どうなってる?なんで俺が見えてる?」勝輝は事故にあった自分を見つめた。
トラックの運転席にもピクリとも動かない中年の運転手が見えた。
「このヤロー!あぶねー運転しやがって!」そう怒鳴りつけると、トラックに近づこうとしたが体が地面から離れて進めない。
「あれ?あれれ?」勝輝は少しずつ宙に浮き、血だらけで挟まれたままの自分を見つめながらゆっくりと上昇していった。
どれくらいの時間上昇したかわからないが、足元を見つめるような角度で事故現場を見ていた。
ちょうどプールのコースと同じくらい、25m程度上昇したあたりで勝輝は気を失った…。そのあとは朝目覚めた通りである。
普通に家で目覚めたことを思い出し、自分が事故にあったことなど記憶から消し飛んでいたのだ。
完結しています。全26章あります。
- 輪廻を駆ける(1:慌ただしい勝輝の朝)
- 輪廻を駆ける(2:勝輝の父と母)
- 輪廻を駆ける(3:パーツショップ)
- 輪廻を駆ける(4:悠真がいたコンビニ)
- 輪廻を駆ける(5:通夜)
- 輪廻を駆ける(6:完成したバイク)
- 輪廻を駆ける(7:二度目の原付)
- 輪廻を駆ける(8:衝突)
- 輪廻を駆ける(9:確信)
- 輪廻を駆ける(10:幽霊という存在)
- 輪廻を駆ける(11:風を切る2台のバイク)
- 輪廻を駆ける(12:海ホタルのカレー)
- 輪廻を駆ける(13:続行)
- 輪廻を駆ける(14:ゴールデンレトリバー)
- 輪廻を駆ける(15:アウトドア好き)
- 輪廻を駆ける(16:あの世への送り方)
- 輪廻を駆ける(17:祖父勝男)
- 輪廻を駆ける(18:ジーの朝食)
- 輪廻を駆ける(19:友達)
- 輪廻を駆ける(20:悠真の家族)
- 輪廻を駆ける(21:鹿公園)
- 輪廻を駆ける(22:仙人)
- 輪廻を駆ける(23:喫茶店)
- 輪廻を駆ける(24:お迎え組)
- 輪廻を駆ける(25:勝輝の選択)
- 輪廻を駆ける(26:エピローグ)
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