輪廻を駆ける(21:鹿公園)

スポンサーリンク

※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

21:鹿公園

勝輝が悠真の家族について回っている間、ジーは鹿を見に来ていた。

小鹿神社のすぐ近くに鹿のいる公園がある。ジーは入り口で買った鹿用のエサを持って可愛い鹿たちに近づいた。「おーい、おやつだぞ」ジーは優しく鹿に声をかけながら鹿におやつを与え始めた。

何人かの人間と会話はしてきたものの、基本的に1人だったジーにとってはもの凄く嬉しい反応だ。ジーは動物園や小動物のふれあい広場のような場所は積極的に行くようにしている。動物達にはいつも癒される。

のんびり過ごしているジーの元に勝輝が駆け寄ってきた。「おー、来たかぁー、お守り買うのにどんだけ時間かかってるんだよ、優柔不断だなー。わははは!」手についた鹿のおやつをパンパンと払いながらジーは笑っていた。

「ジーちゃん、大変だ、悠真がいた!子供が産まれてた!」息を切らし興奮しながら話す勝輝だったが、ジーにはなんのことだかさっぱりわからなかった。そこからジーに促され、勝輝はことの成り行きをジーに説明した。ひとしきり話終えるとジーは答えた。

「この世界は時間なんてでたらめさ。俺は30歳のままだし。未来も過去もなくて、行きたいと思う時代、帰りたいと思う時代にトキが進んだっておかしなことじゃないさ」2人は不思議なことが起こる世界に納得しながら過ごすしかないという気持ちに落ち着いた。

2人は自分たちのバイクが停めてある駐車場に向かった。

その途中、勝輝は買ったお土産をジーに見せた。「わははー!これいいなぁ!」「いいでしょ!?そう思ってジーちゃんのぶんも買ってきた。ほい」

勝輝は鹿公園に向かうときにジーのぶんのお守りを買い足していた。「てんとう虫って転ばないのか!ダジャレかよー、あははー!ありがとなー」2台のバイクは2人の帰りを待っていた。

勝輝とジーは儀式のようにバイクの洗浄とガソリンの給油を済ませた。「慣れたもんだ!カツキにもらったお守りはココにつけておこう」ジーはそう言って元々ついているお守りの場所に勝輝にもらったお守りをくくりつけた。

勝輝はジーのバイクにもとから取り付けてあったお守りを見た。ずいぶん古びた感じだが刺繍で文字が書いてある。そこには漢字が4文字〝桐生勝治〟と書かれていた。

勝輝の胸がざわついた。

「ジーちゃん?ジーちゃんの苗字って〝桐生〟だったりする?」「おう。桐生だ。何でわかった?」ジーは即答したが勝輝が苗字を知った理由をすぐさま理解した。

「あー、これなー!コレが元々つけていたお守り。俺の嫁さんが作ってくれたお守りさ」ジーは愛おしくお守りを見ながら勝輝に説明した。「桐生勝治。名前がカツジだからあだ名がジーなのさ。ウチの家系は名前に勝の字をつけるからみんなあだ名が〝カツ〟になっちゃうだろ?だから〝勝〟の部分が省略されて呼ばれるのさ。おかしな家系だろ?小さい頃からジーって呼ばれてたよ」ジーはニコニコと説明している。

「ジーちゃん…。俺、桐生勝輝だよ…」「え?カツキも桐生なの?カツキのカツって〝勝〟って字?」「うん。親父が勝彦でお爺ちゃんが勝男だよ…」「マジかよ!?勝男は俺の息子だよ!」

一瞬、空気が固まって、時が止まった。

2人は血の繋がった親族であることを同時に理解した。

「じゃあジーちゃんって俺の曾祖父ってことだね」「おう、そういうこったな!ひ孫ぉ!どうりでなんか似てるなぁーって思ったんだよ。なーんだそっかぁー、ジーちゃんじゃなくて、ヒージーちゃんって呼んでもいいぞ!ぎゃっははははっ!」「今更ヒージーちゃんなんて呼べないよ。ジーちゃんて全然お爺さん感ないじゃん!あははははは!」勝輝は大きな声で笑った。

「あたりまえだよ、だって俺、お爺さんになったことなんてねーもん。わははは!」白髪混じりの頭、自分の背丈と同じで、よく見ればまるで兄弟のようによく似た雰囲気の2人は、驚くよりも楽しくなってしまい、大声で笑いあった。笑い声が、鹿たちの向こうへと響いていった。

完結しています。全26章あります。

コメント残していただけるととても励みになります。

是非、楽しんでいってもらえたらと思います。

応援よろしくお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました