輪廻を駆ける(5:通夜)

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5:通夜

家に帰ると様子がおかしい。

プレハブ小屋と母屋の間のガレージに車が二台キツキツに駐車されている。

「親父のヤツ、客を呼ぶからって可愛い俺の部品たちを片付けちまったんだな」

それにしてもこんなに客がくるのは珍しい。

勝彦は真面目で無口。

絵にかいた親父という感じで、趣味は野菜作り。

まだ50代だというのに現役を引退した人のような雰囲気がある。

友達もいるにはいるのだが、何人も集まって何かをやるようなタイプの人ではなかった。

こんなに人が集まるのは正月くらいのものだ。

不思議に思っていると母屋の方に人が集まっていることに気づいた。

みんなが神妙な顔つきである。というか、みんながみんな、真っ黒な服を着ている。

「えー?なんだ、なんだ?これから誰かの葬式に行くのか?」

母屋のリビングに向かうと線香の香りが鼻をついた。

葬式に行く前に線香を焚く必要があるのか?と不思議に思ったが、中を見て察した。

ウチで通夜が行われているのである。

すっかりいつもと違う様子のリビングの奥には花やお供えが丁寧に飾られていた。

すぐ近くにはぼうっとした顔で母の君子が座っていた。

「母さん、いったいなんの騒ぎ?」

こっそりと聞こうとした勝輝の声は君子には届いていなかった。

空っぽの様子の君子は時間を止めたかのように固まったままだった。

「っていうかさぁ、俺にも教えといてくれよ。で、誰のお通夜なんだよ」

棺の中を覗き込むと、棺の中には自分が寝ていた。

鼻には綿を詰められて、棺の中は花が敷き詰められている。

「うわーー!」

思わず大声をあげて腰を抜かした。

「な、な、な、なんで俺が入ってるんだよ!?」

漫画のように尻もちをついたまま勝輝は君子に向かって叫んだ。

「母さん、何なのこれ!?」

君子に声が届いている様子はなくハンカチを握ったまま動かずにいた。

そこに勝彦がやってきた。

のそのそとリビングに入ってくるなり座っている君子の肩にそっと手を添えた。

2人とも何も言おうとはしない。

「親父!なんなんだこりゃ、ふざけるなよ。こんなことやって何の意味があるんだ、気持ち悪ぃーなぁ!」

勝彦に向かって叫んだ勝輝はすっと立ち上がって勝彦の腕を掴もうとした。

しかし、勝輝の手は勝彦の腕を掴めなかった。

磁石の反発力のようにグニグニと跳ね返され、勝彦に触れられない。

何が起きているのかわからなかった。

突如カミナリに打たれたような電撃が頭の頂点から足先に抜けるように駆け抜けた。

瞬間、景色が歪んだ。

――思い出す。今朝、いつものようにパーツショップに立ち寄ったことを…

完結しています。全26章あります。

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