輪廻を駆ける(10:幽霊という存在)

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10:幽霊という存在

俺、死んだのか…。死んだよな。

死んだ瞬間覚えてるしな…。で、このおじさんも死んだ人ってことなのだろうか。

「ねぇおじさんは…」そう話しかけると被せるように男は言った。

「あのなぁ、おじさん、おじさんって言うのやめてもらえる?こう見えてもまだ30だよ。お兄さんだろ、そこはー!はははっ!」

白髪の短髪で細マッチョ、古びた服装に無精髭。

だがよく見ると肌艶は良く端正な顔立ちをしている。

ニカっと笑った笑顔は若々しく、歯も白くて年齢を感じさせない。

髪を黒染めして服を着替えたら勝輝よりも若く見えるかもしれない。

「ふーん、30なんだ、白髪頭なのに?」

「うるせーよ、お前だって二十歳そこそこのクセして白髪たくさんあるじゃねぇか」

勝輝は中学生くらいの頃からポツポツと白髪が生え、年々白髪の量は増えていた。

「これは生まれつきさ。でも特に気にしてない」

「俺も気にしたことなんてねーよ、とにかくおじさんって呼ばれるのは何だか違和感だ。やめてくれよー」

「うん、わかった。俺は勝輝って言うんだ。20歳、大学生やってる。お兄さんは?」

「俺は風来坊、30歳の旅人さ。みんなからはジーって呼ばれてる」

「へぇ、珍しいあだ名だね。ジーさん?ジーくん?ジーちゃん??うーん、ジーちゃんって呼んでもいいですか?」

「おう。おじさんって呼ばれるよりはよっぽどいいや」

ジーは自分のバイクを満足そうに見ていた。

一仕事終えた様子でポケットからタバコを出し、一本咥えて火をつけた。

「ふぅー。カツキ、これからどうする?」

「いや、全然どうしたらいいかわからないよ。ジーちゃんは?」

「俺は旅人だからコイツに乗って旅に出るのさ。お前も来いよ」

ジーは勝輝を旅に誘った。

「でも俺、まだバイクを磨いていない。せっかく組み上げたバイクだからピカピカにして出かけたいんだよ。それと、ガソリンも入れなくちゃ」

ジーは勝輝の話を聞きながら自分のレトロなバイクのガソリンタンクをコンコンと叩いている。

中身がほとんど入っていない空っぽのタンクの音が鳴り響く。

「ガソリン入れたいんだな。そんなのすぐ終わるさ。カツキ、ここを見てろよ」

そう言うとジーは自分のバイクのガソリンメーターを指差した。

すると、空を示しているメーターの針がクククっと上に上がっていく。

満タンを示すところまで持ち上がるとジーは再びタンクを叩いて音を鳴らした。

今度はガソリンが満タンに入っている鈍いコンコンと言う音に変わった。

「え?なんで?どうやったの?」

「簡単さ。目に力を入れながら〝入れ!〟と強く念じるのさ。試してみろ」

勝輝はジーに言われた通り自分のバイクのメーターを睨め付けながらガソリンが入るように念じた。

すると先ほど見たのと同じように自分のバイクのメーターの針が本当に動き出した。

満タンまで針が進んだところで念じるのをやめてタンクを鳴らした。

たっぷりと液体の入った低めの音だ。確かにガソリンは満タンになっていた。

「すごい!本当にガソリンが満タンになっちゃったよ」

「結構色々できる。はははっ!便利だろ?次はピカピカにしてみろよ?」

そう言われた勝輝は少し離れてバイク全体を見渡すような位置からキレイになれと念じた。

いつの間にか細かな汚れや小傷は消え去りバイクは磨きあげたようにピカピカに輝き出した。

「ねぇジーちゃん、これって俺達が幽霊だからできるってことなの?」

「そういうことだな」

ジーは咥えていたタバコを地面に捨てると「で、どこ行きたい?」と勝輝に尋ねた。

「おい、ジーちゃんタバコのポイ捨てはやめろよ」

そう言うとジーはタバコを捨てた場所をちょんちょんと指差した。

勝輝が目をやるとジーが捨てたタバコの吸い殻は無くなっていた。

「俺がいらねーと思ったり、俺から遠く離れたりすると、勝手に消えちまうのさ」

信じられないことが次々と起こる。

勝輝は幽霊という存在は、随分と都合がいいもんだと感心した。

完結しています。全26章あります。

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