愚か者は楽になれない-終わらない代償-(1:深夜の会社)

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1:深夜の会社

深夜0時。会社には誰もいない。

月明かりが無い新月の夜だった。月明かりの無い部屋は、電気を消したら何も見えなくなるほどの闇が広がる。

秀樹は誰もいない会社で、1人螺旋階段を見上げている。

掃除用具入れに片付けてあったロープを持ち出し、頭が入るくらいの適当なサイズの輪を作ると、ロープの逆側を螺旋階段の手すりへと結んだ。

「会社を立ち上げたときに1番拘ったのが、オシャレなデザインのこの螺旋階段なんだけどな…」

秀樹は作った輪を握り、強く引っ張った。しっかりと結ばれたロープは螺旋階段に固定されている。手を離すと重力に逆らうことなく、だらりとぶら下がった。

「はぁ…。あとは踏み台か何かあればいいか…」

秀樹は掃除用具入れから脚立を出してきた。脚立のニ段目に立ち、螺旋階段からぶら下がるロープの輪を両手で握った。

「ここに顔を入れて、頭を潜らせて、脚立を蹴れば…。俺はこれで楽になれるんだ」

十和田秀樹、35歳。

ロープを用意する手は震えておらず、脚立へ上がる足取りは、これから窓を拭くのかと思うほど軽かった。

決心は堅い。

秀樹は自分の立ち上げた会社のこだわりの螺旋階段の下を、最後の場所に決めたのだ。

理由は単純だった。従業員への〝詫び〟の気持ちもあるが、自分が冷静に作業をできる場所が会社だった。ただそれだけだった。

完結しています。全13章あります。続きの章は随時更新しますので、楽しみにお待ちください。

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