愚か者は楽になれない-終わらない代償-(5:確認)

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5:確認

「何かがおかしい。俺は念入りに確認した。ロープの輪が解けるなんてありえないんだ」

確かに秀樹は自分の体重が思い切り乗るほどに、ロープの強度を確認した。首を吊ったときだけ解けるなんておかしい。

「もう一回。2回も3回も同じ。さっさと終わらせる」

秀樹の意思は堅かった。

秀樹は2度も失敗したロープに見切りをつけた。掃除用具入れではなく、別の倉庫から立ち入り禁止に使うようなトラロープを引っ張り出してきた。

それは、先ほどまで使用していたコットン素材で肌触りの良い優しいロープではない。工事現場で使うような黄色と黒の縞模様、ポリエチレン素材の頑丈なロープだった。

「これが切れるわけがない」

秀樹は3度目は首を潜らせる輪を作るのをやめた。スマホのストラップをつけるときに使うやり方を思い出した。トラロープの先端を強く、硬く結び大きな輪を作った。それを螺旋階段の手すりに回し、本体をカバっと通す結び方に変えてみた。

「この先にぶら下がればいい。輪なんていらなかった。最初からこうすればよかったんだ」

今日中に終わらせたい。

なぜなら、明日には給料の振り込まれていないことが発覚する。佐野の行方不明も明確になる。

銀行からの融資もうけられず、億を超える借金を背負った。おまけに最後の虎の子、現金の3000万円も失った。

秀樹には、もうどこに行くにも居場所さえない。仲間も家族も何も残されていなかった。今日中に全てを終わらせて、早く解放されたい。その想いだけだった。

3度目の実行を前に、秀樹はむしろ冷静な判断を示していた。すでに勢いや恐怖は超越していた。実行すべきことを確実に遂行する。

死ぬ前の大仕事…。やるべきことをこなすだけ。

そんな冷ややかな気持ちだった。

完結しています。全13章あります。

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