命懸けのサッカー観戦(10:降格)

スポンサーリンク

※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

10:降格

終わった。

負けた。

横浜が負けた。J2に降格…。嘘だろ、J2に降格なんて。嘘だろ、嘘だよなぁ。

何負けてんだよ、横浜ぁーー!俺の人生を無茶苦茶にしやがった。王者の横浜が、まさかJ2に降格なんて…。

うわぁあああぁーーー!!

頭の中がパニックになりそうだ。両手で頭を抱えて髪の毛をガシャガシャと掻きむしった。やり場のない虚しさと怒りが込み上げてきた。

谷本のシュートが決まってさえいれば、そこでホイッスルだったんだ。なんで外した、なんで外しやがったんだ、谷本ぉー!お前、外した理由を言ってみろよ!

クソ、クソッ! クソーッ!

ありえない。ありえねーんだよ。J2に降格なんてありえねーんだよ、クソがぁ!

青いユニフォームを着たサポーター達が、肩をガクンと落とし、ため息混じりにぞろぞろとスタジアムから吐き出されていく。

許せねぇ、許せねぇ! どいつもこいつも許せねぇ。握った拳の内側が岩石のように硬くなり、額の血管から血が吹き出しそうだ。

応援が足りなかった。サポーター達のエールが届かなかった。ハゲたぬきがビールなんか飲んでるから、応援のエールが届かねぇんだよ、馬鹿! ハゲがぁ!

ちくしょう、ちくしょう、ちっくしょーー!強く閉じた瞼の裏、目の前がチカチカする。食いしばった左右の奥歯が欠けそうだ。

そうだ、あの審判だ。アイツが谷本のシュートの後、すぐにホイッスルを吹かなかったのがいけない。アイツが賄賂か何かをもらっていたに違いない。ボケカスがぁ!

あのとき、あのファウルのときだ。山田の足をもっと痛めつけておけばよかったんだ。レッドカードでもよかった。山田を粉々に粉砕しておけばよかったんだ。クソ生意気なガキが最後にシュートを決めて英雄気取りかよ。てめぇは俺の人生をめちゃくちゃにした犯罪者だ。絶対に許さねぇ、絶対に許せねー。山田ぁー、お前だけは俺が絶対に地獄に落としてやる。

必ず復讐してやる、ぶっ○してやる。そんな言葉が頭に浮かぶほど、普段ならクレバーなこの俺が、完全に冷静さを失っていた。

気がつけば俺は、スタジアムの客がほとんどすっからかんになるまで、怒り狂った鬼のように、仁王立のまま立ち尽くしていた。

風が強く吹き、俺の頬をかすめた瞬間、俺は膝からガクンと崩れ落ちた…。

…全ての力が抜けてしまった。

気がつけば、俺は泣いていた。

それから間もなく、ハンカチで涙を拭ってスタジアムの外へと向かったんだが、足が鉛のように重かった。

負けた。

終わった。

J2に降格。

このまま、どのツラ下げて家に帰ればいいんだ。俺の人生は終わった。もう死んだ方がマシだ。正巳はこの試合結果をいち早く入手するはずだ。もう家には帰れない。

会社のクソ上司の山田も、高村も、同じチームの木村も、明日には横浜がJ2に降格になったことを知るだろう。「横浜降格、ざまぁ」って顔で、俺のことを見下すに違いない。耐えられない。もう会社にもいられない。辞めるしかない。

どうして俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。年間パスを買って何回応援に来たと思ってるんだよ、バカヤロウ!

俺はスタジアムの外に出た。外はすっかり陽が落ちて真っ暗だった。

俺はスタジアムのゲート広場にあるベンチに、力無く腰掛けた。

目の前には、悲しみと怒りの渦に飲み込まれたサポーター達が、地獄の亡者のように歩いていた。しかも、ゴミを散らかしまくってスタジアムを後にしていく。

横浜の聖地、このスタジアムも明日からはもう俺の聖地ではなくなる。

俺はベンチに座ったまま、何もできず目を閉じた…。

著者コメント

2026年4月連載開始、全12章あります。次回更新楽しみにお待ちください。

感想・コメント残していただけるととても励みになります。

是非、楽しんでいってもらえたらと思います。

応援よろしくお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました