命懸けのサッカー観戦(7:せめぎ合い)

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7:せめぎ合い

いつもの試合前の意味わかんねーパフォーマンス。俺は試合に集中したいからダンスとかそんなのはいらねーんだ、精神を集中させろよ。

選手紹介ももうわかってるからすっ飛ばしていいんだ。キックオフまでの余計なエンタメはノイズでしかない。

モニターに映っているくだらねーパフォーマンスよりも、生の選手のウォーミングアップの様子を見せろ。俺は選手のコンディションを見逃さない。

いよいよ、試合が始まった。

緊張してきた。なにせこの試合で負けちまったら最後だ、全てを失うんだからな。慎重にパスを繋げよ。

前半は落ち着いて、慎重に繋げればいい。横浜は負けるチームじゃない。いつもの練習の成果を出せれば、確実に勝ちを積み重ねられるチームなんだ。

って言っても、どの選手もカチカチで、動きが硬ぇよ。

冷静に、って思っているそばからパスをカットされる。

「馬鹿!パスが短ぇーよ。遅い、遅い、遅い!」

相手のシュートが空を切る。観客席からは「わぁー!!!」と、声が張り上げられる。

応援する方も緊張しっぱなしだ。

サポーターの応援もいよいよ力が入ってきた。いいぞ、いいぞ。ピンチのときこそ声を張る。反対側に見える赤いユニフォームを着たサポーターの声をかき消すくらい、声を張り上げてくれ。

前半、30分経過。ここまで押しつ押されつの一進一退。両チームともなかなかシュートのチャンスは巡ってこない。

俺のすぐ後ろにいる夫婦サポーターの会話が聞こえてくる。

「大丈夫?大丈夫だよね?」

「うん。大丈夫大丈夫、これからだって。まだ谷本もいる」

そう。そうなんだよ、まだ谷本がいる。

後半になれば、スタミナ全開の谷本が投入されるはず。谷本はいつも横浜の危ない場面をドラマチックにひっくり返してきた。

前半は相手チームの体力を削って、後半一気に攻めてほしい。前半は慎重にボールを運んでくれ。

パスがカットされるたび、どちらかのチームがシュートへと歩を進めるたびに、スタジアムには地響きのような大歓声が一斉に沸き起こる。やっぱりスタジアムでの観戦はこの臨場感がたまらない。

俺はいつものように歓声の渦の中で、声を上げずに真剣に試合の行方を目で追いかけていた。

張り詰めた緊張の糸は一度も緩むことなく、前半戦はゼロ対ゼロのまま終了。

冷や冷やさせるじゃねぇよ。ひとまずここで一旦落ち着いて、深呼吸だな。

著者コメント

2026年4月連載開始、全12章あります。次回更新楽しみにお待ちください。

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是非、楽しんでいってもらえたらと思います。

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