4:負けられない理由
横浜のユニフォームは海の色、ブルーだ。
俺は青が好きだ。子供の頃からずっと、青が好きなんだ。
車も青。バイクも青。何か買うなら青しか買わない。
サラリーマンだからバッグとかシューズとかは無難に黒だけどよ、スマホとかマウスとか、そういうのを選ぶ時に、黒、白、青、赤ってカラーラインナップがあるだろ?そしたら、もう青だよ。
青しか選ばない。
逆に赤が大嫌いなんだよ。情熱的とか生命力とかのイメージというが、馬鹿馬鹿しい。赤はなぁ、危険信号や、危ない奴らが好きな色なんだよ。
今日の対戦相手は息子の応援するチーム。赤いユニフォームだ。
息子の名前は正巳。俺は正巳が世界に通用するように、横浜のレジェンドと呼ばれているセンターバックと同じ〝正巳〟という名前をつけてやったっていうのに、親不孝者だ。
よりにもよって横浜でもなけりゃ神奈川でもない、別の県のしかも赤いユニフォームのチームを応援してやがる。
正巳が小さい頃は俺がよくこのスタジアムに一緒に連れてきて、青いユニフォームを着て応援していたんだよ。だけどさ、自我が目覚めると〝横浜よりすごいチームがある〟とか言い出しやがった。
アイツは親不孝極まりないよ。今日は絶対負けられねーんだよ。これで負けたら俺は家を出て行くくらいの覚悟ができているんだ。
それと、赤にはもう一つ大嫌いな理由がある。それが、俺の会社のクソ上司の山田だ。
山田はマツダの赤い車に乗って出勤してくる。通勤のときに奴の車が視界に入るとイラつくんだよ。それと趣味の悪い、赤いネクタイ。
チームミーティングで〝チームが一丸となって取り組めば、必ず良い成果が出ます〟とか、真面目な顔して語りかけてくるもんだから、吐きそうだよ。気持ちわりぃ。
そんなこと言われて誰がときめくんだよ。
俺と高村は仲良くやっているが、一番若い木村なんて24で、しかも女子だぞ。
飲みにも来ねーし、一丸になるわけねーんだよ、頭悪ぃよなぁ。
最近は出張が多すぎて、タロの散歩に行けていない。つい先日も出張を減らしてくれって頼んだんだよ。そうしたら山田の馬鹿は〝私は3年前に出張が多かった時期があって、月曜から金曜まで出張なんてこともよくあったよ。きっと慣れるから。大丈夫、私もやってたから〟とか訳のわからない理屈をこねてきやがった。
〝私もやってたから〟とか関係ねぇんだよ。
てめぇの家にはタロはいねーだろうが!馬鹿だな、山田。まったく。頭が悪すぎて話す気にならん。思い出したらムカついてきた。
今日の試合の相手チームにも山田って名前のクソムカつく選手がいる。アイツだけはファールしてレッドカードをもらってもいいから、ぶっ○してほしい。
今日は絶対に負けられねーんだからなぁ。
著者コメント
2026年4月連載開始、全12章あります。次回更新楽しみにお待ちください。
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