命懸けのサッカー観戦(11:病院)

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11:病院

「親父!

親父っ!」

正巳の声だ。

「母さんすぐ来て! 親父が! 親父が起きたよ!!」

なんだ…。五月蝿い。正巳の声か?

「あなた…」

うるせーな、何泣いてんだよ。正巳、大きな声出すな。頭に響く。なんだ、ここは…。俺は何してる?

「親父、聞こえるか? 親父…」

「…るせーよ…」

「うるせーじゃないんだよ、親父。もう2日間も寝たままだったんだぞ!」

何言ってんだ。寝たまま?そうだ。負けたんだ。試合に負けたんだ。俺はスタジアムのベンチで寝ちまったのか?

「よかった。母さん、親父が起きたよ。聞こえる?」

「さ…から…。…るせー…って、いっ…だよ…」

ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあ、騒ぐな、うるせー。頭が痛い。喉が痛くて声が出ない。いったい俺はどうしちまったんだ。

「あなた、救急搬送されたのよ、覚えてる? サッカーの試合の応援に行ったのは覚えてる?」

「母さん、いいよ。俺が説明するから、落ち着いて…」

ちくしょう。うるせーな。大きな声出すな。

「正巳。水…。水くれ…」

なんだこりゃ!?ものすごい、し、沁みる…。身体中が干からびているようだ…。

なんで俺が病院にいるんだよ。救急搬送?冗談じゃない。救急搬送なんてされた覚えはない。なんで病院にいるんだ?

「俺は救急搬送なんかされていない…」

「やっぱり覚えてないのね」

「親父はサッカーの試合の観戦に行ったんだけど、スタジアムのゲート広場で心筋梗塞で倒れて、救急車で病院に運ばれたんだよ」

確かに、運ばれていた運の悪いヤツがいたが、それは俺じゃない。

「スタジアムのゲート広場のところで心筋梗塞で倒れたの、覚えてないの?」

「小僧につまづいて転びはしたが、心筋梗塞でなんて倒れてない」

試合のあと、ベンチで座っているときか…。ベンチに座ってからは…。

思い出せない。

何も覚えていない。

試合のあと、ぶっ倒れたのか?

「ここは病院なのか? 何が起きてる? さっぱりわからん」

「夕方頃だよ。救急隊員の人から連絡があって、母さんとすぐに病院に駆けつけたんだよ」

「夕方?」

「そうだよ、夕方。試合が始まる前だよ。それで病院に駆けつけたら、もう大変だったんだ。即、手術だよ。もしかしたら命が危ない状態で、このまま起きないかもって思っていたんだよ」

「若いお兄さんがあなたに付き添って救急車に乗ってくれたの。命の恩人よ」

クソッ! 馬鹿な、そんなことあるわけない。俺は救急搬送なんてされていない。いったい何が起きてるんだ。

著者コメント

2026年4月連載開始、全12章あります。

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