輪廻を駆ける(3)

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完成したバイク

朝一番でパーツショップへ行くと、勝輝のお目当てのブレーキパーツがあった。

「勝輝くん、今朝届いたよ、君の部品」店員が真っ先に声をかけてくれた。

勝輝は現金で支払いを済ますといつもと変わらず元気にお礼を言ってすぐに自宅へと戻った。家にはブレーキパーツを組み付けるだけの状態のバイクが待っていた。勝輝は何度もイメージした取り付けの手順通りにブレーキパーツを取り付け、ハンドルを握りしめた。

右手を握り込むと前のブレーキが反応し、右足を踏み込むと後ろのブレーキが反応した。取り付けは完璧だ。すぐにエンジンを始動してルンルン気分でエンジンを鳴らすとヘルメットも被らずにバイクに跨った。

人が歩くほどのスピードでガレージの前で動かし、停める。向きを反転し、また進み、そして停める。バイクは完璧に組み上がった。

「やった!ついに完成したぞー!マジでここまで長かったぁ〜。頑張った甲斐があったよ」完成の喜びを1人噛みしめ、プレハブからヘルメットを持ってくると試運転を兼ねてコンビニへと向かった。

バイクの調子は良好。

完成を記念していつも買わずに我慢していたエナジードリンクを買った。試運転を済ませた勝輝は出していた工具類を片付けるために一旦家へと戻った。相棒のバイクをガレージに止めると、片付けながら今日はコイツと一緒にどこに行こうかとワクワクで胸を躍らせていた。

二度目の原付

組み上げたバイクを悠真にすぐに見せびらかしたかった。しかしそのとき勝輝のスマートフォンが鳴り響いた。電話の主はパーツショップの店員だった。

「勝輝くん、ごめん。さっきのブレーキパーツを渡した時に店の伝票一緒に入っちゃってない?」

買ってきた時に貰った箱の中を見ると茶色い封筒が1つ入っていた。

「茶色の封筒が入ってるよ」「あー、それそれ、たぶんそれだー」「〝納品書・請求書在中〟って書いてあるけど」「それそれ、それウチの店で必要な書類だから次来るときに持ってきてくれない?」

次と言われてもバイクが組み上がったばかりなので次はいつ行くかもわからない。なんなら今日は相棒と試運転を兼ねて出かけたい。

「今から持っていくよ」

そう店員に告げるとフルフェイスのヘルメットを被り原付に跨った。用事を済ませたら組み上げたバイクをピカピカに磨きあげて出かけよう。

とっておきのバイクに留守番を任せ、雑用程度は原付で済ませようと考え、パーツショップへと向かった。その日、勝輝は2度原付に乗った。

衝突

パーツショップに向かう途中で大通りから1本横に入った細い道がある。この道は勝輝がいつもショートカットに使っている脇道だ。

エナジードリンクを飲み終えて茶色い封筒だけを持った勝輝は、いつもと同じようにパーツショップに向かった。細いS字カーブに入った瞬間、前からトラックが飛び出してきた。

「あっ――」

ブレーキを握るよりも早く、視界が真っ白に弾けた。

暴走したトラックは車線を超えて原付に乗った勝輝に真正面からミサイルのように突っ込んできた。勝輝は原付ごと弾き飛ばされて道路脇の壁に激突した。

「やべー、やっちまった」気がつくと勝輝は真っ暗闇の中にいた。そこは壁の内側だった。

壁の中は真っ暗で何も見えていなかったが、不思議と動くことはできた。歩いてみると壁からすり抜けて道路へ出た。するとトラックと壁の間で原付ごと挟まれている自分がいた。

フルフェイスのヘルメットの中の自分の表情は確認出来なかったが首筋からおびただしい量の血が溢れていた。「え?どうなってる?なんで俺が見えてる?」勝輝は事故にあった自分を見つめた。

トラックの運転席にもピクリとも動かない中年の運転手が見えた。

「このヤロー!あぶねー運転しやがって!」そう怒鳴りつけると、トラックに近づこうとしたが体が地面から離れて進めない。

「あれ?あれれ?」勝輝は少しずつ宙に浮き、血だらけで挟まれたままの自分を見つめながらゆっくりと上昇していった。

どれくらいの時間上昇したかわからないが、足元を見つめるような角度で事故現場を見ていた。

ちょうどプールのコースと同じくらい、25m程度上昇したあたりで勝輝は気を失った…。そのあとは朝目覚めた通りである。

普通に家で目覚めた事を思い出し、自分が事故にあったことなど記憶から消し飛んでいたのだ。

続き、近日アップします。

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