1:クラスメイト
明日から夏休みが始まる。
休み前最後の登校なので、学校に置いたままにしてある荷物を全部持ち帰るために、海斗は登校した。
「海斗、お前絶対水筒持って帰れよ」世話焼きの湊は海斗が水筒を忘れないように注意した。
「わかってるって」と言いながら、バッグに押し込んだ水筒を目で確認した。海斗は何度か弁当箱や水筒を忘れたことがあり、そのたびに同じクラスメイトの湊に指摘されていた。
「海斗、休みは暇してるんだろ?また助っ人で試合出てくれよな!」
隣のクラスからドタバタと現れた拓真は、海斗を見つけるなり部活の助っ人を依頼してきた。
「出られたらでるけど、忙しかったら断るからな。この前だって今回限りって言ってたくせに、毎度毎度じゃねーかよ」
拓真は団体戦などで試合に出られなくなりそうになると、いつも海斗を当てにしていた。拓真はいくつかの部活を掛け持ちしていて、いつも慌ただしく動き回っている。
この日も「頼むな!」と言い放ってテニス部のメンバーに声かけに行ってしまった。
走り去る後ろ姿の拓真のシャツの隙間からは、サッカー部のユニフォームが見えていた。
朝のホームルームが始まる直前にやってきたのは瑠璃だった。
「まだ遅刻じゃないよね」
瑠璃はおっとりしているというか、時々どこか抜けているところがあるというか--
海斗はいつも瑠璃を気にかけていた。
海斗は瑠璃がホームルームに間に合ったことを横目で見ながら安堵していると、湊は言った。
「瑠璃ぃー、お前なぁー、ギリギリすぎるんだよー。ちゃんと朝声かけただろーが!」「うるさいわね。間に合ったんだからいいじゃない」朝は定番のいつものやりとりだった。
その日の下校時間、海斗は拓真から部活の誘いがかかる前に、そそくさと帰宅しようとしていた。
「あれー、無い。無い無い無い!私のシューズケースが無い!」
瑠璃がぶつぶつとシューズケースを探している。
「瑠璃、シューズケースどっかいっちゃったの?しょうがねぇ、一緒に探してやるよ」
海斗は瑠璃と一緒にシューズケースを探し始めた。
「だいたいシューズケースなんて大きさの物が無くなるのおかしいだろ?実は持ってきてなくて家にあるとか?」
「えぇー、だって今日、上履き持って帰るからって、家から持ってきてたから絶対あったもーん」
海斗と瑠璃が話していると隣のクラスから結衣がやってきた。
「シューズケース、私のところに置いてあったよ」
結衣は瑠璃のシューズケースを片手に持ち、髪をかきあげながら言った。
「あっ、そーだ!さっき結衣のところに行った時に持ってたかもー!えへへ、もぅほんと焦ったー。結衣、さんきゅー」
「じゃ、帰りましょ」今日も結衣と瑠璃は一緒に帰るらしい。
「海斗、ありがとね!」
瑠璃は笑顔で海斗にお礼を言うと結衣の元へ走って行った。
海斗は「おう、良かったな」とだけ言った。
笑顔の瑠璃が可愛くて、目を合わせられなかった。
海斗は海の香りがほのかに漂う自宅の方へと帰っていった。
著者コメント
小説をブログで掲載(連載)することにしました。未完成のまま終わるのが嫌だったので、完結まで書ききってからの連載スタートとしました。
全26章あります。コメント残していただけるととても励みになります。
是非、楽しんでいってもらえたらと思います。
応援よろしくお願いします。




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