あなたのリーダーはどんな人でしょうか?
植田さんは上司としては自己中心的で我儘で無茶苦茶な人ですが、リーダーに向いている人です。
あなたの上司が自己中で我儘で無茶苦茶な最低の人だと思ったのなら、ちょっとだけ見方を変えてみると、もの凄いことが発見できるかもしれません。
あなたに足りないリーダーシップをあなたの上司が持っています!
誰もできないのにどうするの?この仕事。
大手電機メーカーから最先端通信技術の開発の話しがあったよ!
この仕事がやりたい!っていうか、やる!!
おいおいおい、ちょっと待って下さい、植田さん。
最先端通信技術って誰も聞いたことのないような開発、ウチのメンバーじゃ絶対できないのに何考えているのでしょうか?
誰もできないのに「やる!」って言ったって無理です。
チームは「植田さん、何言ってんだ?」と冷ややかな目で見ていました。植田さんに誰も協力しようとはしませんでした。
しかし、植田さんはお構いなしです。「絶対にやりたい!」とか言って、ちょっと興奮気味に熱く語りだしました。なんとか見積りを通して受注したいそうです。
聞けば聞くほどビックプロジェクト。チームには荷が重すぎます。まだ誰も開発したことのないような最先端の通信技術ってだけでハードルが高すぎるし、リスクだって大きすぎます。
誰もできないような仕事を「やる!」ってハリきったって、その仕事どうするのでしょうか?
どうせ、そのうち諦める?
どう考えたって植田さん一人じゃ無理だし、チームでやるって言ったって誰が何をやればいいんだか…。
放っておけば、きっとそのうち諦めるでしょう。
それからというもの植田さんはビックプロジェクトの調査に乗り出しました。誰も植田さんには協力しません。各自、自分の抱える仕事をするだけで精一杯。夢のようなビックプロジェクトの調査なんて手伝っていたら、自分の仕事が終わりません。
植田さんは週一回のミーティングの時に、通信の本を買って土日で勉強していることや、知り合いの協力メーカーに資料を貰ったことや、関連技術のセミナーに参加することなど、あれこれと報告してきました。
正直暑苦しいくらいです。
「植田さん、あなたは上司なんだから、みんなの仕事の管理をちゃんとして欲しい」と、主任がズバリな指摘をしたら
うん、みんなの管理は主任がやっといて、私はセミナー聞いてくるから!
って、行っちゃったよ…。
なんて自己中な上司なんでしょう。植田さんが自己中なのはいつものことです。
どうせ、そのうち諦めるでしょ。
新人が何かの調べものをやっている
いつもやることなさそうに暇そうな新人がなにやら電話をしたり、外出したり、何かしています。
聞けば母校の教授と連絡を取り合っていると言います。
どうしてそんなことをしているのか?気になった他のメンバーが聞くと、実は植田さんからの直接の指示だということです。
また勝手なことを指示して、通常業務のことなんてお構いなしです。偶然新人は手が空いていたので誰の迷惑にもなりませんでしたが、仕事が忙しい時期だったらたまったもんじゃありません。
で、母校の教授と連絡をとりあって、植田さんは何をしたいんだろう…。このままじゃ仕事に差し支えるかもしれないので、週1のミーティングを待たずに直接聞いてみることになりました。
新人君の母校の教授が特殊アンテナの書籍を出していて、最先端技術の通信に使えると思ったんだ!
そういうことかと、みんな納得。植田さんはまだビックプロジェクトを諦めていないのねと、誰もが認識しました。
新人君にあれこれ指示を出して振り回しても可哀そうですので、業務に関係ないのであればほどほどにしてほしいところです。
1億円の見積りを提出
植田さんホントいい加減にしてほしい。
いよいよメンバーから不満の声が出てきてしまいました。チームの業務の事は主任に任せて放置状態。いつまでもビッグプロジェクトのことを語っていて、なかなか諦めない植田さんにクレームです。
ちょうどそのタイミングで開催したチームミーティング。だれもが耳を疑う事件が起きました。
ビッグプロジェクトの見積りを提出した!金額は1億円!
この仕事は絶対やる!ウチのチームに必要なプロジェクトだ!
植田さんは本気だし、全然諦めていなかったのです。
ウチのチームで1億円の仕事なんて過去にやったことないです。
開発するのにどれくらいの時間が必要かもわからないのに、よく1億円なんて根拠のない見積りが出せたな、と思います。
「植田さん、1億円ってホントにできるんですか!?受注がとれても知りませんよ!」
ほら、やっぱり主任に怒られた。
植田さんは1億円で開発ができる根拠を淡々と説明していましたが、結局よくわかりませんでした。今までの実績を元に算出しただけの「勘」に近いような見積りです。
でも、誰もやったことのない最先端技術の通信に関する見積りなんて「勘」に頼る部分も多いでしょう。
え?まさかの受注?
1億円の見積りを提出した開発プロジェクトだけど、他の開発メーカーも見積りを提出しています。
大手電機メーカーの開発のプロジェクトを我々のような小さな会社が受注するわけないよね。とチームメンバーで話していました。
植田さんの暴走もコレで終わりだろう。
みんなそう思っていました。
ところが話しは急展開。
大手電機メーカーの見積り依頼は数社が依頼されていました。でも、実際に見積りを提出した企業は2社だけ。他の数社はみんな辞退したそうです。ウチの会社ともう1社、ウチは植田さんの1億円の見積りです。
2分の1の確率で受注する?まさかね、そんなハズないよね。もう一社はいくらで見積り出したの?どうなの、どうなの?なんて、ざわざわしていたら「注文書」が届きました。
見事、植田さんの1億円のビックプロジェクトが受注したのです。
やったー!
ビックプロジェクトの進行
このあとは本当に大変なことになりました。今まで誰も開発したことのないような通信を実験するために試作を作ったり、実験をしたりしました。
植田さんはそれこそ、毎日遅くまで、休日もお構いなしに仕事をしていました。
いつの間にか新人君と母校の教授が実験を手伝っているし、隣のグループのエンジニアが助っ人に来ているし、社長が心配になって様子を見に来ていたりします。
植田さん、本当に大丈夫なんでしょうか?
大丈夫だって!私達なら絶対できる!今までだって難しいのや大変なことがあったけど、やってこれたよ。今回は教授にも入ってもらったし、機材だって購入して設備も準備した。試験場も抑えている。来週からは某大手メーカーのエンジニアにコントローラーの事を教えてもらう。リスクなのはあまり時間がないことと、実験が失敗した時のリカバリ案が模索中ってところさ。でも私はやるって決めた!このビックプロジェクトを必ず成功させて、私達の会社の存在をアピールするんだっ!
またまた、暑苦しくなっています。夢ばっかり語っていると主任が…。
「植田さんのプランには根拠がない。そんなやり方じゃ失敗しますよ!私は自分の仕事が終わるまでは絶対協力しませんから」
ほら、また怒られた。
それでも植田さんは気にしていない様子で、「まぁまぁ」と、なんとか主任をなだめています。このプロジェクトは主任に手伝ってもらわないと絶対にうまくいかないとわかっているんです。だってスケジュールの後ろのほう、実験の一番難しいところに小さく「主任」って書いてある。笑
リーダーシップとは?
リーダーシップとは、人を吸い寄せるチカラのことです。
「みんな、私に協力してねっ!」なんて言う人はリーダーシップが無いんです。
「なんで協力しなくちゃいけないんだよ!嫌だよ!」って思われるんです。
協力してくれって言っている人は、「協力してくれたらできる」と言っていて、裏を返せば「協力してくれなきゃできません」って言っていることと同じです。
リーダーシップがある人とは植田さんのような人のことです。
みんなが「協力しませんよ!」って言っているにも関わらず、「やるっ!」って言ったら一人でも動いちゃってるんです。「誰もいなくても俺はやる!」って言って動き出しちゃいますから、危なくてしょうがないんです。
そんな危ない人を見ている人は大事故を起こさないように協力してしまうんです。新人君や教授のように、気が付けば何かお手伝いをして協力している。
植田さんが「協力してくれ」ってお願いしたワケではないんです。
キミの母校に行きたいんだ!教授に会いたい!
教授、アンテナを見せて!新しい通信に使える?コレってどうなの?こっちの形にしたら使える?明日も来ていい?無理なら次いつ会える??
植田さんのように、こうやってグイグイ来ちゃうんです。そして、いつの間にか協力している。
周りの人にかかる迷惑や心配なんて「関係ねぇ!」って思っているような自己中心的な人こそリーダーシップがあるんです。リーダーに向いている。
あなただって植田さんのビックプロジェクトがきたら怖いですよね。リスクも金額も大きくてハラハラしちゃうじゃないですか。
だから「協力してくれ!」って言われたら「嫌です!」って返事をすると思います。植田さんのリーダーシップが凄いのは 「協力してくれ!」 なんてお願いは一切しないところです。
このビックプロジェクトは最後は成功を納めているのですが、責任の重さに耐えられなくなって会社を辞めた人もいます。それでも植田さんは諦めませんでした。
「絶対やるっ!」って植田さんが熱くるしくなっていた段階で、周りに迷惑がかかることは目に見えていました。リーダーシップのある人は周りの人に迷惑をかけることもあるんです。(といいますか、だいたい迷惑をかけながら周囲を巻き込んでいます)
「やる」ってことしか考えていないので、周りの人からしたら「何言ってんだ?」ってこともあります。植田さんは相手に受け入れてもらえないことなんて、考えていないでグイグイいきます。全然気にしない。
みんなにやってくれっていう前に自分からやり始めちゃっている。
漫画の主人公
リーダーシップの強い漫画の主人公って、まさに植田さんみたいな感じではないでしょうか?
仲間想いのところはあるのですが、自己中で我儘で無茶苦茶な人。キチガイでクレイジー。だけど憎めなくて、放っておけなくて、みんなが集まってきちゃう人。支えてくれるって信じて疑わないし、離れていってもスッキリしている。
漫画の主人公のような人って少ないです。
つまり、リーダーシップを持つ人というのは、割合的に少ないんですね。
リーダーシップの身に着け方
まず最初にお断りしておきたいのは白獅子はリーダー向きな性格ではないという点です。
私はリーダーのすぐ横でリーダーについて分析をしていますが、自分がリーダーに向いているかと問われれば答えはノーです。
そんな私でもリーダーシップの身に着け方は心得ています。良いリーダーの近くで学んできましたからね。
リーダーシップを身に付けるには「ポジティブ」「好奇心」「自己中」です。
やりたいことを前向きな気持ちで、ワクワクと楽しみながら、自分が主体となって取り組むことでリーダーシップは身に付きます。やるって決めたことを「やる」ってだけでリーダーシップが身につくんです!
逆にリーダーに向いていない人は、仲間や協力者を求める人です。統率力を鍛えようとしたり、みんなが気持ちよく働ける環境を用意しようとして、みんなの気持ちを考える人はリーダーには向きません。
これが私の分析してきた解です。
矛盾しているようですが、不思議とそうなっているように感じています。
あの人が「海賊王になる!!」って自己中なことを言っているけど、吸い寄せられてみんなが協力しちゃってます。リーダーシップが素晴らしい。
だって楽しそうだったから、絶対やりたい!って思ったんだ。ほんとうに大変だったけど、みんなのおかげで成功したよね。次は2億円の仕事を成功させて、名刺に海賊王って書こうかな?はははっ!!
「ポジティブ」「好奇心」「自己中」 いいリーダーの条件です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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