夏の海風と記憶釣り(17:プレゼント)

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17:プレゼント

「全部は渡さないわ」「ビックリしたー。結衣、こんなにいっぺんに渡したらクリスマスになっちゃう。きゃはは」

結衣が買ってきたものをテーブルにずらっと並べた瑠璃はその量の多さに驚いていた。

「で、どれを渡すのがいいかしら?」

「うーん、私が渡すとしたらハンドタオルとスポドリの粉かな」

「やっぱりそうよね、私もその組み合わせがいいと思ってたわ」

「だよね!これなら絶対使ってもらえそうだし、気軽に渡せると思うの」

瑠璃は結衣が買ってきたものの中から、ハンドタオルとスポドリの粉を手に取った。

誰かのモノマネをするような仕草で長い髪を耳にかけると、両手に丁寧にプレゼントを持ちながら結衣に差し出した。

「拓真くん、付き合ってください!」

瑠璃は結衣を目の前にして、頭を下げてプレゼントを差し出している。

「ちょ、何?何?え?何?それ、私??やめてよ。言わないわよ。私、付き合ってくださいなんて絶対言わない…」

結衣は瑠璃が差し出したプレゼントを手のひらでぐいっと押し戻した。瑠璃は頭を下げてプレゼントを差し出したままだ。

「付き合ってください!」

瑠璃はまだやっている。

「ちょ、やめてよ。無理無理無理…。ダルいダルい」

「付き合って…、くだ、さいっ!!」

結衣は瑠璃がプレゼントを差し出したまま下がらないので、仕方なしにハンドタオルとスポドリの粉を受け取った。すると、瑠璃はニコニコとした顔で結衣を覗き込んできた。

「受け取っちゃったね。うふふ」

結衣は顔を真っ赤にしながら「やめて…」と恥ずかしそうに呟いた。

瑠璃と結衣が部屋の中できゃっきゃっと盛り上がっていると、外から海斗と湊の声が聞こえてきた。

「しゃーない、付き合ってやろーぜ」

なんだなんだ?と瑠璃と結衣はそっと外を覗いてみると海斗と湊がとぼとぼと家に入り、間もなくグローブとバットを持って外に出てきた。

瑠璃は窓越しに尋ねた。

「湊ー、どしたの?どっか行くのー?」

湊と海斗はハッと気がつき、湊が返事を返した。

「そー。拓真監督が”練習するからグラウンド集合!”だってさー」

「あははっ!拓真監督なぁー、ほんっと、それだわ」

海斗は湊の後ろで笑っていた。

「ふーん、頑張ってねー。いってらー」瑠璃は簡単に返事を返して下がった。

「結衣、拓真くん達これからグラウンドで練習するらしいよ」

瑠璃は目をキラキラしながら結衣を見た。

「渡しちゃえば?プレゼント」

「え?今から?全然心の準備ができていないんだけど…。今日はまだ、いいわよ…」

「渡すなら早い方がいいじゃない」

そういうと瑠璃は出かける準備をし始めた。

瑠璃の部屋でエコバッグにプレゼントを入れ、グラウンドに行く準備をしながら結衣は思い出した。

「ねぇ、そう言えば海斗くんとランチに行く約束はどうなったの?今湊くんと一緒にいたよねぇ?」

「うーん、誘ってなーい…」

「え?だって昨日堤防まで送り出したのに、誘わなかったのー?」

「だってぇ…」

グラウンドに行くまでの道のりで瑠璃は結衣の問い詰めに合うことになった。

昨日、今日と、攻守交代しながら問い詰めあっている二人は、本当に仲睦まじかった。

グラウンドで練習をする野球部と、拓真、湊、海斗の助っ人三人。合計十人。

夏休みの昼下がりだというのに拓真”監督”の呼びかけがあると全員集まってしまう。

遠巻きから結衣と瑠璃は楽しそうに野球をするみんなを見ていた。

キャッチボールをしたりノックをしたり、練習はいろいろと続いていた。バットに当たる球の音や、野球部の元気な掛け声が小気味よく響いていたが、次第に一人、また一人と帰っていった。しばらくすると残ったメンバーでベンチに腰掛けて話をしていたが、それもすぐに終わった。

「じゃあまたなぁー」お互いに手を振り合っている。

解散のようだ。

「結衣、終わったみたい。みんな帰って行くよ」

「うん。そうみたいね」

「ホラ、早く渡しに行かないと」

瑠璃と結衣は拓真の元へ向かった。

拓真は結衣に気がつくと、照れた様子で遠くから手を振った。

湊と海斗はそれに気がつくと、お互いに目を合わせてニヤーっとした笑みを浮かべながら、拓真の元をそっと離れた。

瑠璃は結衣に気を効かせて、そーっと湊と海斗に合流した。遠くから二人の様子を見守ることにしたのだ。

「結衣はどした?拓真に用でもあるのか?」

湊が瑠璃に尋ねた。

「ちょっとね」

瑠璃はそれ以上何も説明しなかった。

海斗はハッとした。「ヤバっ、結衣に頼まれてたんだけど、拓真が宿題やったか聞くの忘れてた!」

「まぁもう直接聞けばいいんだからいいだろ」湊はアッサリと言った。

三人はサード側ベンチ方面に見える拓真と結衣を直視しないように、ちらちらと見ていた。

しばらくすると拓真と結衣はベンチに腰掛けた。

何か話しているが内容までは聞こえてこない。

気になる。

気になるけど聞いちゃいけないんだ、と三人とも気を使っている。

「なぁ、お二人さんは二人きりにしてやろうぜ」

「そだな。あとは若い二人に任せますかな」

海斗の提案に、湊はお見合いのセリフのように同意した。

「そーね。お邪魔お邪魔ー」

三人は帰ることにした。

「なぁ、瑠璃、拓真ってさぁ、結衣のこと好きみたいなんだけど、知ってる?」

湊が瑠璃に尋ねた。

「おい、湊!確定じゃないんだからやめとけって」

海斗が湊を制した瞬間。

「は?結衣が拓真くんのことを好きなんじゃなくて??」

瑠璃が口を滑らせた。

「結衣って拓真のこと好きなの?」海斗が尋ねた。

「え?あ…。うん…。私から聞いたって誰にも言わないでね」

なーんだ、じゃすべてオッケー、めでたしめでたし、なんじゃないだろうか?

三人はさっきの二人がどうなったのか益々気になって仕方がなかったが、それぞれの家に帰っていった。

著者コメント

全26章あります。コメント残していただけるととても励みになります。

是非、楽しんでいってもらえたらと思います。

応援よろしくお願いします。

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