2020年にSUBARUのアイサイトの開発担当をしたSUBARU Lab 所長が柴田氏です。
その柴田氏が語っていた内容を振り返ります。
AMDとSUBARUが長い間ディスカッションをしてきた結果、2020年アイサイトVer4を成功に導いた。
どうゆうことか、この記事で解説します。
どうゆう経緯でアイサイトを開発してきたのか
SUBARUは「笑顔を作る会社」
車を作るというよりもお客様の価値を作ることを目標にしていると明言しています。
アイサイトを開発する大きな理由は、2030年に死亡交通事故ゼロを目指すところにあります。
2020年の最新のアイサイトにはSUBARUらしさが全面に出されています。
社会的責任
SUBARUは航空機メーカーとしてのDNAを持つ、設計の哲学の原点が「安全」というキーワードに集約されていると思います。
過去10年、SUBARUは米国・日本で低い死亡交通事故率を実現しています。
https://members.subaru.jp/with/nakanohito/trivia/142.php
アイサイトのリアルワールド効果
人身事故全体で約6割低減しています。
そのうち追突事故は約8割低減しています。
スバルによると、米国の自動車販売台数100万台当たりの死亡事故数(2020年度)が米国平均で60.3件となっているのに対して、スバルは31.6件と半数に近い。日本国内の100万台当たりの死亡・重傷事故数(同)は国内メーカー平均の171件に対して、スバルは127件と低いという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/35d88f1ad2216ad1691df4c2fc862b2fe1ac79d2#:~:text=%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE,127%E4%BB%B6%E3%81%A8%E4%BD%8E%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82
この低減の結果はSUBARUの運転支援技術の確からしさが証明された形になります。
SUBARU社内ではバンパー修理、板金修理が如実に減ったと、ディーラーからの確かなデータで裏付けられています。
ステレオカメラとセンサーの違い
1989年、研究開発をスタートしたときからステレオカメラ開発の研究を続けてきた経緯があります。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06495/
ステレオカメラでは立体視ができます。
二つのカメラから立体データを生成し、構造物を全て立体視します。
ミリ波レーダーは距離と速度は取れるが、反射を拾うので物体が何なのか輪郭がどんなかはわかりません。
ですので、ミリ波レーダーは単眼カメラと併用されることが多いのです。
ステレオカメラなら、距離、速度、輪郭、そして物体が何なのか、その全てが取れるのです。
どのセンサーにも得意、不得意がありますがアイサイトの得意技がズバリ!ステレオカメラなワケです。
アイサイトVer3
https://www.chubu-jihan.com/subaru/news_list_m.php?page=contents&id=374
3Dポイントクラウド、SUBARUでは距離画像と呼んでいます。
二つのカメラで撮った立体データから画素ごとに距離を算出します。
点群データから物体の形状や距離をとります。
そのデータから物体を追跡(トラッキング)して、速度も算出します。
ステレオカメラからとった点群データが、物体を追跡するには理想的なデータだったのです。
近年ではLiDARの技術も出てきていますが、SUBARUは33年前から距離点群データに「可能性」を見出していたのです。
距離点群が運転支援や安全をキープするシステムに必要不可欠だと、早い段階で気づいていたということです。
認識判断に必要なデータが効率よく簡単に収集できるので、ステレオカメラを採用しているのです。
2020年レヴォーグ
アイサイトVer4、カメラはスウェーデンのメーカーを採用しています。
アイサイトVer4を搭載したのはSUBARUのレヴォーグです。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06495/
2014年ころ、従来型のアイサイトVer3ではFPGAを使用していませんでした。
二つのカメラデータをASICで取り込み、ステレオマッチングしたデータをバス経由でRAMへ格納、距離データと画像データを画像処理のProcessorと制御のProcessorを利用しステレオ制御をするというものでした。
大きなチップがASICやRAM、その他にもいくつかあります。
2020年、アイサイトVer4で採用されたAMDのFPGA-MPSoCは、ASICやRAM、その他周辺のICを取り込んで置き換えることができます。
画像処理やステレオマッチングが全てAMDのFPGA-MPSoCで処理できます。
Ver3からVer4の進化では圧倒的にチップの数が減っています。
とにかく性能を上げ、チップを減らし、サイズも小型化する。
そして、コストダウンにも繋げてゆく。
全ての要素をレベルアップさせるのがSUBARUの狙いです。
そして、それを設計の王堂だと語っています。
1000万円、2000万円する車に搭載する機能ではなく、SUBARUのインプレッサでも搭載可能なものを考えたのです。
インプレッサを引き合いに出しているのはSUBARUの量販帯車種だからです。
決して高級車のみに搭載される機能ではないということです。
パソコンで開発したロジックを、バカ早いSoC、または高額のSoCにそのまま突っ込んで「とりあえず動けばいい」、そんなシステムは全く考えていません。
ギチギチまで追い込む、それがSUBARUが自分達自身で内製している理由なんです。
https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/1381/705/html/20_o.jpg.html
そういった理由から選ばれたのがAMDのMPSoCというワケです。
4つのミリ波レーダーや高精度地図ロケーターなど、いろいろなセンサーの処理や機能を詰め込んだのがSUBARUのステレオカメラです。
他社製ではセンサヘッドと処理部分、といったように機能を分離することがありますが、SUBARUはコスト低減のために全てアイサイトの中で処理を行っています。
また、カスタムICは使っていません。
汎用ICをどう使いこなすかがコスト低減に繋がります。
カスタムICはコストが高くなるからです。
年間1000万台くらい作れるメーカーであればカスタムICを使うこともあるのですが、SUBARUは年間100万台のメーカー。
その規模感も十分把握し、汎用ICをどう使いこなすかがキーだと考えているのです。
新世代アイサイト
事故防止が最大のテーマなので、自動運転をより高度にするというコンセプトではありません。
優先順位はあくまでも死亡事故をゼロにすること。
2030年に死亡交通事故ゼロを目指しています。
AIとSUBARU Lab
SUBARUは渋谷にAI開発の拠点「SUBARU Lab」を作りました。
次の世代に向けた、ステレオカメラに搭載するAIの開発に乗り出しています。
距離データと画像を活用しつつSUBARUらしいステレオカメラ向けのAIを作ろうとしています。
SUBARUが開発するAI、それが「ASURA Net」です。
マルチタスクネットワークにより、クルマ、走行領域、路面標示、信号など、車の走行に必要な情報を同時に認識することができます。
複雑な交通量の処理でもステレオカメラだからできるAIエンジンで、低コストかつ高機能なAI処理を実現しています。
SUIBARUが拘り続けているのはアイサイトで示すように、同じ筐体の中で全ての処理を実現することです。
ひとつの例になりますが、ミリ波レーダーを搭載しているシステムの運転支援で「坂の途中にマンホールがあると、マンホールでレーダーが反射してしまい坂の手前でブレーキがかかる」といった問題があります。
これはレーダーだけ、単眼カメラだけ、の場合で、坂の認識はかなり厳しいのです。
AIを使えば、走行可能なエリアを推論することができ、SUBARUのステレオカメラとフュージョンさせると路面の高さ推定と合わせて、走行可能と判断できるようになります。
SUBARUにはステレオカメラのデータとして持っている点群データがあるため、AIのデータとシステムの中で共有できるのです。
SUBARUがステレオカメラの中でAI処理を行う一番の目的は、ステレオカメラで得た距離点群データとフュージョンできるからと言えるでしょう。
複数のシステムでわけてデータを取り、センターECUにデータを集めて処理をさせるシステムとはまるでコンセプトが違います。
まとめ
次のシステムのためにさらに新しい半導体の進歩に将来のシステムの性能が密接に絡んでいます。
電気電子系ではどの分野でも同じことが言えます。半導体の進歩はそれほどまでに重要です。
AMDのような常に進歩する半導体メーカーと協力体制を築けば、コストと性能を両立するシステムの構築が可能です。
時代の変化が早く、次々と新しい技術が生み出されてきます。
新しい技術の中身を理解して、いかに効率良く組み合わせて、「何がやりたいのか?」を自分達で作り上げていくのが大事なことだと、改めて認識させられます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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