命懸けのサッカー観戦(2:試合の朝)

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2:試合の朝

嫁も息子も何時まで寝てんだか。

いつも適当な俺だが、今日は大事な日だ。もちろん顔も洗った。髭も剃った。歯も磨いた。

「タロ、悪いな、行ってくる」

唯一起きていた柴犬のタロの頭を撫でてから、俺は家を出た。

昨日は三杯しか飲んでねーから流石に二日酔いにはならなかった。だけどよ、頭がツーンと痛い気がする。

こういう症状は時々あるんだ。もう五十五だからよ。頭が痛かったり、手が痛かったり、足が痛かったり、そんなことはしょっちゅうさ。

何度か病院にも行ったことあるけど、俺は医者が嫌いだね。適当な薬を出されていつも終わり。治りゃしねー、歳だな。まぁ試合の前にはいつものように気にならなくなるさ。

俺は電車が嫌いだ。スタジアムまで一時間以上…。長すぎる。ダイヤが乱れることなんてしょっちゅうだし、信用していない。

今日は絶対に遅れたくない。起きたらすぐに出発するって決めてたんだ。

ホームへ下る階段を降りたときだ、ドンッと人がぶつかった。

「おいっ、痛ぇな。気をつけろよ」

駅のホームで何慌ててんだか、ぶつかってきたのはババアだ。ババアって言っても多分俺よりも少し上くらいなもんだけどよ。謝りもしねーで、さっさとどこかに消えやがった。

ババアがぶつかってきたからか、左腕が痛い気がする。仕方ない、電車の中でよく揉みほぐしておくか。

昼前にはスタジアムの最寄駅に着く。そこで牛丼でも食べて気合いを入れなくちゃな。

駅に着いたのはいいけどよ、どうしてこんなに人が多いのか。どいつもこいつもきゃんきゃんとうるさい。

大事な試合の日くらい静かにメシを食わせてほしいもんだ。

牛丼チェーン店の〝よしや〟に着いたら牛丼の並盛りを頼む。そして、牛丼にたっぷりと紅生姜を乗せる。それが俺のいつもの牛丼の食べ方さ。味噌汁には手をつけない、味噌汁は最後に全部飲むんだ。

味噌汁を全部飲み終えたら、テーブルを綺麗に拭き取る。

最近は外国人のスタッフが多いせいか、片付けが行き届いてないことが多い。前の人の食べこぼしが平気で机に落ちていたりする。俺は自分が食べた後は綺麗に拭き取ってから戻す。

「ごちそうさん」

「アリガト、ッザイマースゥ」

腹が満たされたら食後の一服だな。ここまではもうお決まりのルーチンだ。

喫煙者は肩身が狭い。こんな端にある喫煙所まできて一服しなくちゃならない。

喫煙所でタバコの空箱を灰皿の上に捨てていく馬鹿が大勢いるんだけどよ。タバコの空箱は持って帰ってゴミ箱に捨てろよな、といつも思う。

喫煙所が閉鎖されたら、空箱捨ててる奴らのせいだな。マナーの悪い馬鹿が多くてイライラする。イライラしたせいか、久しぶりにヤニクラを感じちまったよ。

さて、試合まで時間はたっぷりある。腹も満たされたし、一服も終えた。チケットのQRコードも今日の19時からで間違いない。

ここまで、完璧だ。

あとは今日の試合で勝って、J2への降格だけは回避してもらう。

俺の願いはもうただ一点、それだけだ。

著者コメント

2026年4月連載開始、全12章あります。次回更新楽しみにお待ちください。

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