開発や設計に携わる人にとって必ず耳にする言葉「推奨」
今回は推奨という言葉の意味の持つ、えげつないパワーと効力について、守らないとどうなるの?ということを深堀りしていきたいと思います。
推奨を辞書で調べてみる
推奨という言葉を辞書で調べてみると
ある品・人・事柄などがすぐれていることを述べて、人にすすめること
と、記載されています。
要約すると「おすすめ」って意味ですよね。
ゲームをやるならメモリは16GB以上を推奨します!
このように言われると、「なるほど、おすすめは16GB以上ね」って感じますよね。
日常会話ではこの解釈で間違いないと思っています。
推奨動作条件
電子部品のデータシートを見ていると「推奨動作条件」と記載されていることがあります。
電子部品の世界の「推奨」はとても意味が深いです。
日常生活の中でこの言葉を聞いた場合は「推奨動作条件=おすすめの動作条件」という解釈をすると思います。
おすすめ=守らなくても特に罰はないだろう、と考えちゃいます。
これがもの凄い落とし穴なんです。
製品Aの推奨動作条件の例
具体的に推奨動作条件を考えてみましょう。
例えば製品Aの場合
製品Aの推奨動作条件
- 0℃~40℃
- 連続使用30分以内
0℃~40℃だったらおおよそ部屋の中のイメージですね。
30分以内で使えばいい。簡単簡単、絶対守れますわぁ。
こんな製品イメージわきますかね?
この推奨動作条件をおすすめ動作条件として使っている人は
さっき製品Aを外で使っていたんだけど、さすがに40℃は超えていないと思うよ。平気平気ぃ~
いつも45分くらい使ってるけど、全然動いてるし、なんともないよ。平気平気ぃ~
と、まぁ、こんな感じです。
推奨どうりに使っていなくたって動くし、あまり気にすることはないと思います。
ところが、この製品Aが突然動かなくなったとします。
ちょっとーー!!壊れたんだけど!!!
不良品だぁ!交換してよ!!
どのように使用していましたか?
ふ、ふつうに使っていたよ…
0℃~40℃以内でしたか?
30分以内でしたか?
外で30分くらい使っただけで、壊れたんだけど!
晴天の日は日差しの条件により40℃を超えることもありますが、0℃~40℃以内でしたか?30分くらいと仰っていますが、30分は超えていませんか?
うっ…
推奨動作条件を守ってお使いください。
故障の原因になります。
あれれぇ~、推奨動作条件を「守って」って言われちゃった。
ちょっとくらい守れなくても使えてたのに、残念!
推奨の意味
製品Aの例でもお分かりいただけたと思いますが、製品や電子部品などでは「推奨」の意味が深いです。
別に我々の示す推奨を守ってもらわなくても使えると思いますけど、壊れても知りませんからね!
推奨っておススメじゃないの??
おすすめです。壊れずにお使いいただくためにオススメしていますが、守っていただけない場合は当然壊れる可能性が高まりますので、私達は交換などには応じません。
メーカーさんに不良品を交換してもらいたいなら、メーカーさんの示す「推奨」の使い方に従わなくてはなりません。
当然と言えば、当然。
乱暴に使っていて「壊れたーーー!!!」って騒いだって誰も対応してくれないんです。
つまり、電子部品や製品の場合の「推奨」は「おススメですよ」という意味ではなく「絶対に守りなさい!」という意味なんです。
交換に応じて欲しいなら、我々が示す推奨動作条件は必ず守りなさい!
もし、我々の推奨動作条件を守れないのなら交換には断じて応じません!!
無駄な駆け引き
推奨の持つ絶大なる効力を「盾」に、メーカーは常に精神を研ぎ澄ましています。
そのメーカーに対して、時々不思議なお問い合わせが入ります。
推奨に連続使用30分以内って書いてあるんだけど、連続使用35分で使ってもいいですか?
連続使用30分以内を推奨しています。連続使用35分の場合は推奨外です、連続使用30分以内でお使いください。
連続使用35分使ったら何か問題なの??
連続使用35分でお使いの場合は故障の原因になります。
メーカーが示す「推奨動作条件」をはみ出して使用してもよいか?という内容のお問い合わせです。
この問いは無駄な交渉、無駄な駆け引きです。
メーカーは推奨動作条件以外の扱いに絶対に「OK」は出しません。
メーカーは不良品を生み出したくありませんし、交換や保証もしたくありません。大きな損害になるからです。
そのために膨大な時間と人とお金を費やして、「この範囲ならまず大丈夫だ!」という安心安全な条件を「推奨動作条件」に掲げています。
もちろん、余裕も含んでの「推奨動作条件」です。
-20℃~60℃で使っても1回も壊れたことなんてないけど、推奨動作条件は「0℃~40℃」にしておく。
連続使用40分で使っても1回も壊れたことなんてないけど、推奨動作条件は「連続使用30分」にしておく。
そんな感じ。
たとえ話し
推奨を守らない人の例え話をします。
データシートに記載の「推奨」はもはや法律に等しいです。
いやいや、大袈裟ではなく、意味としては同じ効力があります。
赤信号は止まれです。必ず守って下さい。
赤信号は止まれというのは理解しているのですが、この信号に限っては別。
別とは?
私は毎朝この赤信号を無視しています。私が朝通る時間は人も車も絶対に通ることはありません。もう何年も赤信号を無視し続けていますが、一度も事故にあったことも無ければ、人や車に遭遇したこともありません。
いえ、それは偶然と考えるべきです。赤信号であれば必ず止まって下さい。車や人がいなかったとしてもです。
ふん!知るもんか!朝は忙しいし、あそこの信号に限っては関係ないね!
赤信号を守らないのなら、どうなっても知りませんからね!
怖いですよね。
これで事故が起きた場合どうなるのでしょう?
違反してるんですから、事故にあっても誰も守ってくれないでしょう…。
「推奨」はもはや法律に等しく、推奨動作条件を守らない場合はメーカーはもうまともにとりあってさえくれません。
まとめ
開発や設計に携わる人は「推奨」と記載されていても「おすすめ」とは思わないで下さい。
推奨は必ず守らなければいけないです!
法律に匹敵するくらい厳しいんです!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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